ポーリーヌ・ガルシア=ヴィアルド
ポリーヌ・ガルシア=ヴィアルドまたはポーリーヌ・ヴィアルド(
Pauline García-Viardot
/
Pauline Viardot
,
1821年
7月18日
–
1910年
5月18日)は、19世紀
フランスの声楽家・
生涯 [ 編集 ]
スペイン人の著名なオペラ歌手の家庭に生まれ、若い頃は、美貌の姉マリア・マリブランの陰に隠れがちであったが、父マヌエル・デル・ポポロ・ビセンテ・ガルシアに可愛がられて
1837年に16歳で、ブリュッセルで最初の演奏会を行い、1839年には
恵まれた広い声域と、劇的な役柄をこなせる演技力によって、マイアベーアやベルリオーズ、ショパン、サン=サーンスらに霊感を与えた。マイアベーアの歌劇《預言者》のフィデス役は、ポーリーヌ・ヴィアルドのために創られている。ブラームスの《アルト・ラプソディ》の世界初演でコントラルトとして歌ったのも彼女であった。
作曲家を自認することはなかったが、それでもかなりの数の作品を遺しており、後にオペラ界から引退してからは、歌劇《最後の魔法使い Le dernier sorcier 》を作曲している。ポーリーヌ・ヴィアルドは語学力にも恵まれ、スペイン語やイタリア語、フランス語のほかに、英語やドイツ語、ロシア語も流暢に操り、さまざまな言語で声楽曲を創作した。ショパンのマズルカを歌曲に編曲したものや、グルックのアリアをピアノ伴奏用に書き換えたものも遺している。
ポーリーヌ・ガルシア=ヴィアルドは、音楽活動を通じてヨーロッパ各地の演奏会場を訪れ、1843年から1846年まで絶え間なくペテルブルク歌劇場に客演している。彼女の人気は、ジョルジュ・サンドをして小説『コンスエロ』(1843年)のヒロインを着想せしめたほどであった。
ガルシア=ヴィアルドの論評として著名なものは、イギリスのソプラノ歌手アデレード・ケンブルによって残されている。二人はロンドンでイタリアの偉大なソプラノ歌手ジュディッタ・パスタの演奏会に出席したが、その声は明らかに盛時を過ぎていた。その声をケンブルにどう思うかと訊ねられて、ポーリーヌ・ヴィアルドはこう答えたという。「ええ、昔の面影はないわね。でも、レオナルドの“最後の晩餐”だって同じよ。」
1863年に舞台から引退。夫ルイがナポレオン3世に反対する立場を公にしたため、ヴィアルド家はフランスを捨て、ドイツのバーデン=バーデンに亡命した。ナポレオン3世が失脚するとフランスに戻り、ルイ・ヴィアルドに1883年に先立たれるまでの間、パリ音楽院で教鞭を執りつつ、サン=ジェルマン大通りの自宅で音楽サロンを主宰した。
1910年に愛する家族に看守られつつ息を引き取り、モンマルトル墓地に埋葬された。
パリ近郊ブージヴァルのヴィアルド邸(Villa Viardot)は、ツルゲーネフからヴィアルド家への(1874年の)贈り物であり、多くの音楽家や画家、詩人が訪れた。2001年より、ジョルジュ・ビゼー協会や「文化遺産と都市計画 Patrimoine et Urbanisme」の働きかけにより、修復作業に入っている。ポルトガルのバリトン歌手ジョルジュ・シャミネは、しばしばマスタークラスをヴィアルド邸で主宰している。
外見 [ 編集 ]
ポーリーヌの人気は、芸術家や人間としての魅力で勝ち取ったものであり、見た目の美しさによるものではなかった。半分閉じたような
目、厚い下唇をした大きな口、その陰でへこんだ
それでもなお、ポーリーヌのその他の能力が、彼女のこうした短所を埋め合わせていた。「聴衆が彼女の顔立ちを忘れてしまう」ほどの歌唱力は、評論家が「ビロードの上を転がる琥珀」になぞらえるほど魅力的な声質に彩られていた。服飾センスの良さや丁々発矢の会話、そして芸術家としての力量が、その他の名だたる女性歌手たちとの差であった。
ポーリーヌを描いた肖像画では、不恰好な顔の造作が修正され、美人画のように描かれている。ツルゲーネフは、自ら『春の水 Вешние воды』において、金髪で灰色の瞳をした肉感的な美女として彼女を美化しているが、亡くなる前に自宅に飾った彼女の写真を見ながら、「何と摩訶不思議な顔立ちよ!」と叫んでいたという。
外部リンク [ 編集 ]
- Pauline Viardot-Garcia papers - guide to the musician's personal papers and scores in the Houghton Library at Harvard University.
- Pauline Viardot-Garcia (includes reviews of early concerts by Alfred de Musset and George Sand)
- ポーリーヌ・ガルシア=ヴィアルドの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト